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前橋地方裁判所桐生支部 昭和47年(わ)139号 判決 1973年3月17日

主文

被告人を懲役一〇月に処する。

押収してある覚せい剤粉末〇・五七一四グラム(昭和四八年押第一号の一)ならびに覚せい剤粉末〇・四二一〇グラム(前同号の二)をいずれも没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、いずれも法定の除外事由がないのに、

第一(一)  昭和四七年六月下旬頃、その頃自ら経営に当り、かつ居住もしていた東京都新宿区角筈一番一号所在クラブ「夢」において、鈴木昌男より、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末約〇・六グラムを代金二万円位で譲り受け、

(二)  昭和四七年八月一二日頃、群馬県桐生市菱町黒川一、〇六三番地特殊浴場黄金サウナ「金松園」において前同鈴木より、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末約一・〇グラムを代金二万七、〇〇〇円で譲り受け、

(三)  昭和四七年九月中旬頃(一)記載のクラブ「夢」において前同鈴木より、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末約〇・五グラムを後記第三(三)の行為に対する謝礼として譲り受け、

第二(一)  昭和四七年一一月一六日頃東京都渋谷区代々木四丁目五三番八号の当時の被告人方において覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末〇・四三七グラム(昭和四八年押第一号の二はその一部である)を所持し、

(二)  昭和四七年一一月一六日頃群馬県伊勢崎市今泉町一、二六〇番地伊勢崎警察署内において、覚せい剤原料である一―フエニル―二―メチルアミノプロパノール―一の塩酸塩を含有する粉末〇・七六一二グラム(昭和四八年押第一号の一はその一部である)を所持し、

第三(一)  昭和四七年七月上旬頃群馬県山田郡大間々町大字桐原九七四番地の五飯島進一方において前記鈴木昌男より谷中清に対し、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する固形約七グラムを代金二七万円で譲り渡すに際し、右飯島から同人らに対し覚せい剤を譲渡する意図ある者の紹介方の依頼を受け、これに応じ、被告人において覚せい剤をこれより買入れていた右鈴木に購入希望者のあることの連絡ならびに同人に対し右飯島方への案内人をつけるなどしそれぞれを引合わせるなどの手配をし、もつて右譲渡の犯行を容易ならしめてこれを幇助し、

(二)  昭和四七年八月一二日頃、群馬県桐生市菱町黒川一、〇六三番地特殊浴場黄金サウナ「金松園」において前記鈴木から谷中清に対し、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末約二グラムを代金七万円で譲り渡すに際し、右谷中から覚せい剤購入の希望が述べられるや、これに応じ既に譲渡の意図を抱いていた右鈴木にこれが販売方をすすめて販売させるなどし、もつて右譲渡の犯行を容易ならしめて幇助し、

(三)  昭和四七年九月一〇日頃群馬県山田郡大間々町大字桐原九七四番地の五飯島進一方において、前記鈴木より右飯島、前記谷中清の両名に対し、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末約七グラムを代金二七万円で一括して譲り渡すに際し、右飯島、谷中らから覚せい剤購入の希望をうけるや、これに応じ右鈴木に買受希望者のある旨を連絡するなどの所為をなし、もつて右譲渡の犯行を容易ならしめて幇助し、

(四)  昭和四七年一〇月五日頃群馬県山田郡大間々町大字桐原九七四番地の五飯島進一方において、前記鈴木より右飯島、前記谷中清の両名に対し覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末約七グラムを代金二七万円で一括して譲り渡すに際し、右飯島、谷中らから覚せい剤購入の希望を受けるや、これに応じ右鈴木に買受希望者のある旨を連絡するなどの所為をなし、もつて右譲渡の犯行を容易ならしめて幇助し、

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示第一の(一)ないし(三)の各所為はいずれも覚せい剤取締法第四一条第一項第四号(第一七条第三項)に、第二の(一)の所為は同法第四一条第一項第二号(第一四条第一項)に、第二の(二)の所為は同法第四一条の四第一項第六号(第三〇条の七)に、第三の(一)ないし(四)の各所為はいずれも同法第四一条第一項第四号(第一七条第三項)刑法第六二条に、各該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、判示第三の(一)ないし(四)の各罪は従犯であるから同法第六三条第六八条第三号によつて法律上の減軽をし、以上は同法第四五条前段の併合罪なので同法第四七条本文第一〇条により犯情も最も重い判示第一の(一)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、押収している覚せい剤粉末〇・五七一四グラム(昭和四八年押第一号の一)は判示第二の(二)の、覚せい剤粉末〇・四二一〇グラム(前同号の二)は判示第二の(一)の、犯罪行為を組成したもので、犯人以外の者に属しないものであるから同法第一九条第一項第一号第二項本文によつて、いずれもこれを没収することにし、主文のとおり判決する。

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